DHAの効果はどこまで信頼できる?調査結果まとめ

DHA

世間では「頭に良い」「子供の成長に良い」というイメージで有名なDHA(ドコサヘキサエン酸)。

DHAは特に妊婦や授乳中の方や、成長期の子供を育てている親御さんの間で関心が高いですよね。

 

DHAには様々な効果があると言われていますが、実際どこまでが信頼できる情報なのでしょうか?

この記事では、世間でよく紹介されているDHAの効果について、科学的な根拠を調査し、その信頼度を判定してみました。

DHAを摂る前の判断材料の一つにしていただければ幸いです。

 

なお、DHAは単独で調査されている報告が少なく、またDHAの単独摂取となることも少ないため、DHAを含むオメガ3脂肪酸(n-3系多価不飽和脂肪酸)、魚油についても一部調査対象としています。

必須脂肪酸の関係図

信頼度:高

中性脂肪

信頼度:高複数の質の高い検証で、DHAが中性脂肪を低下させることが確認されています。
 
ただし、DHA単独で摂取するよりも、EPAと併用か、魚油(DHA、EPA含む)として摂取する方が、より効果が望めそうです。

信頼度:中

コレステロール(HDL、LDL)

信頼度:中質の高い検証で、HDLを増加させることが示されていますが、同じ検証ではLDLが増加する報告も出ています。
 
また別の質の高い検証で、逆にHDLに影響を及ぼさないことも示されています。
 
コレステロールを減らす目的でDHAを摂ることは、現時点ではまだ裏付けに乏しいと判断します。

アルツハイマー

信頼度:中ある特定の遺伝子(APOE4)がある人であれば、DHA摂取による予防効果があるかもしれません(米国国立補完統合衛生センター)。
 
ただし、別の質の高い検証では、オメガ3脂肪酸はアルツハイマー患者に対してメリットはないことが示されています。
 
DHAがアルツハイマーに効果があっても、それはごく一部の人(前述の特定の遺伝子を持った人)に限られる可能性があります。

認知機能(高齢者)

信頼度:中質の高い検証で、加齢に伴う記憶力の低下にDHAもしくはDHA+EPAは効果があると示されています。
 
ですが、他の質の高い検証では逆に、オメガ3脂肪酸は高齢者の認知機能低下に効果がないことが示されています。
 
これらのことから、DHAは加齢に伴う記憶力低下に役立つ可能性はありますが、実際に効果が出るかどうかにはまだ疑問の予知があると判断します。

乳児の発育(視力)

信頼度:中質の高い検証において、視力に関するテストの一部で効果があることが示されています。
 
ただし、効果がなかったとする報告も他に複数あるため、効果は限定的か、あってもそこまでのレベルは望めないかもしれません。

信頼度:低

血圧

信頼度:低DHAだけで血圧を下げる報告はありますが、質の高い検証は確認できませんでした。

DHA+EPAであれば質の高い検証があり、血圧を下げる作用が示されています。
 
(ただし、下がるとしても1~5mmHg程度であり、そこまで期待できる効果ではなさそうです。)

非アルコール性脂肪肝

信頼度:低

DHAだけで非アルコール性脂肪肝の改善の報告はありますが、質の高い検証は確認できませんでした。
 
オメガ3脂肪酸であれば、非アルコール性脂肪肝が改善することが質の高い検証で示されています。

認知機能(成人、小児)

信頼度:低

成人、小児ともに一部に効果ありとの報告はありますが、質の高い検証で効果があることが確かめられているデータは見当たりませんでした。
 
小児に関しては、質の高い検証で効果が無いことが示されているので、頭の働きをよくする目的でDHAを摂ることはあまり意味がないかもしれません。

小児のADHD(注意欠陥多動性障害)

信頼度:低

小児・思春期のADHD患者では血液中に含まれるDHAの濃度が低く、血液中DHA濃度とADHDとの間には関係があるとする報告はあります。
 
ただし、DHAを摂ってもADHDの症状が改善するとする報告は少なく、オメガ3脂肪酸や多価不飽和脂肪酸による検証でも、大部分は効果なしとの結果が出ています。
 
DHA単独のみならず、オメガ3脂肪酸や多価不飽和脂肪酸においても、ADHDの改善は期待できる程の結果は望めないと思われます。

うつ

信頼度:低

DHA単独では、うつに効果があるとの報告はありませんでした。
 
しかし、EPAかオメガ3脂肪酸であれば、改善の可能性があることが、質の高い検証で示されています。

がん

信頼度:低

前立腺癌について、DHA単独では効果がなかったとの報告が質の高い検証で示されています。
 
またオメガ3脂肪酸においても、効果なしとの報告が質の高い検証がなされていることから、現時点ではがんに対してDHAを摂取する意味はあまり無いと思われます。

自閉症スペクトラム障害(ASD)

信頼度:低DHA単独では効果なしとの報告があり、オメガ3脂肪酸では質の高い検証で効果なしとの結果となっています。

心血管障害(狭心症、不整脈、脳卒中など)

信頼度:低

DHA単独では、冠動脈疾患のみ死亡リスクを低下させる可能性が示されています。
ただし、十分な質の高い検証ではありません。
 
DHAだけでなく、EPA、オメガ3脂肪酸についても、心血管障害の発生や死亡率に影響を及ぼさないことが質の高い検証で示されています。

早産、低体重児の予防

信頼度:低

DHAだけでも、早産、低体重児の予防に効果があったとの報告はありますが、これは質の高い検証ではありません。
 
質の高い検証が行われているのはオメガ3脂肪酸の方で、早産、低体重児の予防に効果がある可能性が示されています。
 
妊婦の方は、DHA単独よりもオメガ3脂肪酸や魚油を摂ることを意識する方が良いと思われます。

乳児の発育(脳と体)

脳の働き(認知機能)

必要なもの

脳の働き(認知機能)に関しては、DHA単独では一部に効果ありとの報告がありますが、質の高い検証はありませんでした。
 
他のEPAやオメガ3脂肪酸の検証では、こちらも部分的に効果ありとの報告がありましたが、大半では効果が無いことが示されており、質の高い検証でも効果が無いことが示されていたことから、DHAに限らず、オメガ3脂肪酸等においても、乳児の脳機能に対しては、期待するような結果が得られないと思われます。

体の成長

必要なもの

効果あり、なしどちらの報告もありましたが、DHA単独での質の高い検証はありませんでした。
 
DHAが属する多価不飽和脂肪酸では、質の高い検証で効果なしと示されているため、身体成長においても期待するほどの効果は得られないと思われます。

早産児の成長

必要なもの

効果ありとなしの双方の報告が複数あります。
 
DHAが属する長鎖多価不飽和脂肪酸を使った質の高い検証では、効果がないことが示されています。
 
これらのことから、早産児の成長を促進させる目的ではあまり効果は期待できないかもしれません。

データが少なく判定できなかった効果

以下の効果については、質の高いデータが少なく、今回は評価ができませんでした。

血液粘度の低下(血液サラサラ)

判定できず

DHAによる血液粘度についての検証はほとんどありませんでした。
 
オメガ3脂肪酸については、質の高い検証の中で血液粘度の低下が報告されていましたが、限定的なデータであり、十分な根拠とはならないものでした。

ストレス

判定できずDHA単独で、ストレスに関係するホルモンであるノルエピネフリン濃度が低下するという報告がありましたが、質の高い検証が他に見つかりませんでした。

不妊(男性)

判定できず

質の高い検証で、DHAもしくはEPAにより精子の運動能、精液中のDHA濃度が向上することが示されています。
 
ただし他に評価できるほどの、質の良い報告が見つかりませんでした。

DHAの摂取量の目安は?

DHAだけでの摂取量の目安は特にありません。

オメガ3脂肪酸について、米国FDAの推奨はサプリメントとしては1日2gを超えないこととされており、また日本国内における摂取基準の上限も2gであることから、他のEPA等のオメガ3脂肪酸も合わせて、1日2gを超えないようにしましょう。

また、1日3gを超える量では、出血傾向が強く出る恐れがあるので、あまりに高用量の摂取はオススメしません。

参考 食品表示ガイド米国FDA

薬剤師からのアドバイス

DHAの効果に関しては、基本的に単独での調査や検証がとても少ないです。

言い換えれば、「科学的な裏付けが少ない」と言うことになります。

DHAに対する世間のイメージは「頭に良い」「子供の成長に良い」というものがありますが、実際のところは期待と現実の間には大きなギャップがあると言えるでしょう。

以下に要点をまとめてみました。

  • 最も可能性が高いのは中性脂肪を下げる効果。ただしEPA、オメガ3脂肪酸、魚油の方が効果は上。
  • 脳機能は可能性がありそうなのは高齢者(記憶力、アルツハイマー型痴呆)。
  • 「頭を良くする」効果は成人、子供はあまり期待できない可能性
  • 妊婦の方は、栄養バランスの観点からDHAを摂る意味はある。早産、低体重児の予防目的ならオメガ3脂肪酸に注目した方が良さそう。それ以外の効果はそこまで期待しない方が良いかもしれない。

DHAの効果に関しては、信頼度の高い情報が少ないので、対する過度の期待は持たない方が良いかもしれません。

ただし、摂る意味がないわけではなく、DHA自体は必須脂肪酸(体内では作られず、外から摂る必要あり)の1種ですので、体を健康的に維持するためにも、摂取は推奨されています。

DHAは、何かプラスアルファの効果を求めて摂るよりは、栄養バランスを摂るための一環として摂る程度で考えておくのが良いでしょう。

EPA、オメガ3脂肪酸の方が信頼度の高い検証が多いため、何かプラスアルファを求めるなら、それらの成分の方を意識する方が良いかもしれません。

 

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