妊婦さんのDHA摂取について | どこまで効果ある?サプリでも大丈夫?

赤ちゃんと母親

「赤ちゃんをなるべく元気に産んであげたい」
親なら誰しもそう思いますよね。

ましてや、初めてのお産なら不安もいっぱいだと思います。

元気な赤ちゃんを産むために、今がんばって色々と調べていることでしょう。

 

赤ちゃんになるべく良いことを調べていると、たどり着くのが「DHAが赤ちゃんに良い」というお話。

さらに「頭も良くなる」なんて話を聞くと、愛する我が子のためにしっかり摂らなきゃ!と思いますよね。

 

DHAを摂るには魚が良いと言われますが、今の時代、魚を食生活に取り入れるのはなかなか難しいところ。

また、「前は魚好きだったのに、つわりで食べられなくなった」と言う切実な声も・・・。

 

「このままじゃ、DHAが不足してしまうかも」

そんなとき、次に気になるのがDHAサプリメントですよね。

「でも、サプリって添加物とか大丈夫かな?」
「妊娠中でも、サプリ飲んで大丈夫なのかな?」

と今度は別の不安も。本当にお母さんは一生懸命で、色々大変ですよね。

 

そこでこの記事では、妊娠中のお母さんのために、

  • DHAはどのくらい赤ちゃんに良い?
  • うまくDHAを摂る方法は?
  • サプリで摂っても良い?

といった疑問を中心に、妊娠中のDHA摂取について情報を分かりやすくまとめてみました

DHAについての知識を深めて、安心して出産を迎えるためのお手伝いができれば幸いです。

特別な効果は期待しない&まずは食事が基本

まず最初に、結論を簡単にまとめておきます。

 

DHAには様々な効果が報告されていますが、「頭が良くなる」などの平均以上になるような特別な効果には、そこまで期待はしない方が良いと思われます。(しっかりとした検証が乏しい効果が多いため)。

妊婦さんがDHAについて考えるときは、赤ちゃんの体を作るのに必要な栄養が不足しないことを意識する程度で良いのではないか、というのが今回の調査の結論です。

妊婦さんで期待できるDHAの効果については、記事の後の方で取り上げています。

 

また、DHAを摂ることを考えるなら、サプリではなく食事が基本とするのが良いでしょう。
可能なら、まずは魚が不足しない食生活を考えましょう。

サプリで摂るならば、中には妊婦の方は避けることが書かれている商品もあるので、基本は妊婦向けのものを。添加物や水銀などに配慮されたものが安心です。

魚を食事で摂ることや、サプリについても、ここから後の記事中で触れていますので、そちらも参考にしてみてください。

妊婦さんでDHAが重要な理由は?

赤ちゃんの脳神経の発達に重要

DHAはオメガ3脂肪酸(n-3系脂肪酸)とも呼ばれる、体内では合成できない必須脂肪酸の一種です。

食事を通して取り込む必要があり、子供だけでなく、大人にも必要な栄養になります。

 

特に妊婦さんでDHAが重要と言われるのは、DHAは脳や神経、視覚機能で重要な成分だからです。

赤ちゃんの脳や神経は、お母さんのお腹の中にいる間、特に妊娠後期に発達すると言われています。

 

そのため、厚生労働省が発表している「妊産婦のための食生活指針」では、妊娠中にDHAを含むオメガ3脂肪酸(n-3系脂肪酸)を多く摂ること、そのために魚を食べることを推奨しています。

参考 妊産婦のための食生活指針厚生労働省

その他のDHAのメリット

体にとって大事な成分(特に脳神経)であるDHAですが、それ以外にも様々なメリットが報告されています。

DHAで良く紹介されているメリット
頭が良くなる、アレルギー予防、早産予防、周産期うつ(マタニティブルー)の軽減など

 

ただし、これらの効果はそのまま鵜呑みにしない方が良いでしょう。

DHAだけに限った効果じゃない

まず第一に、DHAが体に良いという説明の中には、DHA以外の効果も含まれていることに注意が必要です。

DHAは必須脂肪酸のオメガ3脂肪酸の仲間で、その中には、他にEPAやα-リノレン酸も含まれます。

必須脂肪酸の関係図

DHAは魚の油の中に豊富で、魚油の中にはEPAも豊富であるため、EPAとDHAはよく同時に摂取されます。

そのため、DHAの効果として紹介される中には、EPAとの同時摂取や、オメガ3脂肪酸という大きなまとまりでの効果が混在していることが多いのです。

可能性に振り回されすぎないこと

DHAの効果として取り上げられているものの中には、まだ検証が不十分なものもあると言うことにも注意しましょう。

例えば、DHAの効果として紹介しているものの中には、1つの科学的な報告だけを元にして「効果あり」と紹介している場合もあります。

 

実は、1つの科学的な報告だけでは、どれだけ質の高い実験でも根拠としては不十分です。

最も信頼度の高い結果とは「同じ質の高い実験が別のグループによっても行われ、その複数の実験をまとめても、効果ありと判定される結果」になります。

 

DHAで紹介されている効果には、この「何度も確かめられた結果」と「検証が少ない結果」が混在しているので、全てを鵜呑みにしてしまわないように注意しましょう。

DHAの効果の信頼度は?

妊娠中の母子に関係するDHAの効果に関しては、当サイトの調査では、以下のような結果になっています。

  信頼度 補足
早産、低体重児の予防 オメガ3脂肪酸として。
頭が良くなる(=認知機能) DHA、オメガ3脂肪酸どちらも。
周産期うつ オメガ3脂肪酸として。
アレルギー オメガ3脂肪酸として。

↓参考元はこちら

 

当サイトの調査では、DHA単独より、さらに大きなまとまりであるオメガ3脂肪酸としての方が信頼できる科学的検証が多く、DHA単独を意識するよりオメガ3脂肪酸に注目した方が良いのではないかと言う結果となりました。

これは厚生労働省が妊婦さんにDHA単独としてではなく、オメガ3脂肪酸の摂取を推奨していることとも一致します。

 

また妊娠期間中に関係する効果のうち、信頼度が高い情報が多かったのは、DHA・オメガ3脂肪酸を通しても早産・低体重児のみでした。

他の3つの効果に関しては、「効果あり」と言えるような質の良い検証が不足しており、現時点では期待できるとは言えない結果でした。

 

DHAは栄養バランス面から考えるのが良い

DHAはオメガ3脂肪酸の1種として人体に欠かせない栄養成分であり、特に妊娠後期において、赤ちゃんの脳神経の発達には重要な役割を持っていることは確かです。

しかし、頭が良くなるなどの一歩進んだ効果となると、信頼度が足りない効果もあり、またDHAよりもオメガ3脂肪酸の方に注目した方が良いパターンも少なくありません。(早産、低体重児の予防など)

以上の事から、DHAに関してはあまり過剰な期待を抱かず、基本的には栄養の偏りや不足を防ぐことを目的とし、DHAだけに注目するのではなく、もう少し広い視野でオメガ3脂肪酸を意識して摂るのが良いのではないか、というのが当サイトの判断になります。

DHAは本当に不足しているの?

魚離れとは言うけれど

DHAを摂った方が良いと言う話には、大抵の場合において「魚離れ」や「食の西洋化」といった説明がセットでついてきます。

現在の食生活と、昔の食生活(昭和以前)を比べると、たしかに魚を食べる機会は減っていて、それに伴い、体内に取り込まれるDHAの量も減っているようです(データは割愛)。

ですが、それは本当に「不足」と呼ばれるほどのレベルなのでしょうか?

妊婦の摂取基準

厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によれば、妊婦、授乳婦の方ともにn-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)の基準は1日あたり1.8gとなっています。

ちなみに、出産することの多いと思われる18-29歳と30-49歳の一般女性では、1日あたり1.6gとなっています。

妊婦、授乳婦のほうが少し高めに設定されていることが分かりますね。

参考 日本人の食事摂取基準厚生労働省HPより

実は不足していない?

次にどれだけ平均的に栄養が摂れているか?について、厚生労働省が発表している国民健康・栄養調査について見てみましょう。

参考 国民健康・栄養調査厚生労働省HPより

平成29年の国民健康・栄養調査の結果によれば、女性のn-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)の摂取状況は以下の通りです

  • 20-29歳:1.88g
  • 30-39歳:1.87g
  • 40-49歳:1.88g

先ほどの摂取基準(1.8g)と比べると、n-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)が不足しているわけではなさそうです。

魚食文化の少ない西洋文化の国では確かに摂取量はもっと低いようですが、日本は海の幸に恵まれ、比較的魚食も多いため、西洋ほど積極的な取り組みは必要ないのかもしれません。

葉酸の場合
DHAと共に、妊娠中に必要な栄養として注目されやすい葉酸についてはどうでしょうか?

厚生労働省の食事摂取基準によれば、妊婦の方の葉酸の推奨量は480μg/日。

一方、国民健康・栄養調査によれば葉酸の摂取状況は、20-40代は平均226-250μg/日と、妊娠時の推奨量を大幅に下回ります。

葉酸に関しては、サプリメント等を利用して積極的な対応をした方が良さそうです。

バランスの悪い人、つわりの人は積極的でも良いかも

DHAよりもう少し大きな枠組みでのオメガ3脂肪酸によるデータでしたが、一般的な生活を続けていれば、そこまで必死になって求めてオメガ3脂肪酸やDHAを摂る必要はないかもしれません。

しかし、魚を使った料理を用意する余裕がない、もしくは元々魚は苦手で食べられない、つわりで魚が食べられないという人では、推奨量を少し下回る可能性も出てくるかもしれません。

心当たりがある人は、不足しているDHA(またはオメガ3脂肪酸)を補うことを考えても良いかもしれませんね。

DHAを摂るなら、どの方法が良い?

DHAが不足している気がするので、ちょっと摂ってみようかな・・・という人は、こちらの情報を参考にしてみてください。

まずは魚を食べることを考えて

DHAが豊富なのは、やはり魚。

特にサバ、サンマ、イワシなどの青魚や、脂ののったマグロやブリなどがDHAが豊富でオススメの魚として知られています。

 

魚はDHAだけに限らず、他にもタンパク質やミネラルといった良質な栄養も摂ることができるので、バランスの良い食生活に組み込んでいきたいところです。

 

ただし、魚をたくさん食べるという人は注意が必要です。

一般的な量なら問題ないのですが、魚にはメチル水銀という有害物質が微量含まれていて、他の小魚をたくさん食べるような大きな魚(クジラやマグロ、カジキなど)はメチル水銀を多く含むため、食べ過ぎには注意が必要です。

妊娠中に食べる魚の種類や量については、次のパンフレットが参考になります。

参考 お魚について知っておいてほしいこと厚生労働省HPより

サプリメントはどう?

元々魚が苦手で食べられない。つわりで魚が食べられない。

そんな人達は、DHAをどうやって摂るか悩みますよね。

 

食事からDHAを摂るのが難しい人は、魚油やDHAの入ったサプリメントを検討してみても良いでしょう。

 

「妊婦でもサプリ飲んで大丈夫なの?」と不安な人は、最近では妊婦さん向けに配慮されたサプリメント(無添加、水銀チェック済み)が販売されていますので、そちらを検討してみてはいかがでしょうか。

 

サプリメントを摂る場合は、いくつかの注意点があるので覚えておきましょう。

  • 魚と同じ効果を望めるとは限らない
  • 他のサプリとの成分の重複に注意

魚の方が栄養面では優れている

魚にはDHAやEPAといったオメガ3脂肪酸だけでなく、それ以外の栄養も豊富というメリットがあります。

魚の健康効果は、このその他の栄養も関係していると言われています。

 

サプリメントは必要な成分は簡単に摂れますが、魚と同じようなメリットは得られない可能性があることは、覚えておいた方が良いでしょう。

成分の重複に注意

複数のサプリメントを飲んでいると、時に同じ成分が重複してしまうことがあります。

気付かないうちに必要以上の量の成分を摂取していると、過剰摂取になって思わぬ健康被害に遭うことも

複数のサプリメントを飲むときは、成分の重複に注意しましょう。

妊娠中のDHAに関するQ&A

「妊娠中はサプリはなるべく避ける」と「妊娠中はDHAを積極的に摂った方が良いからDHAサプリを飲むこと」は、どっちが正しい?

どちらも正しいです。

妊娠中はなるべく不要なものは摂らない方が良いので、不要なサプリはなるべく避けた方が良いでしょう。

ですが、DHAが不足しないようにすることも正しいことですよね。

DHAを摂りたいなら、まずは魚を食べることを考える、それが難しい場合には、妊婦の方向けに作られているDHAの入ったサプリを選ぶのが良いと思います。

 

DHAは赤ちゃんのためにいつから摂るのが良い?

妊娠後期(8ヶ月~)が特に重要と言われますが、可能なら妊娠当初~授乳終わりまで続けると良いでしょう。

DHAが特に重要とされるのは妊娠後期。これは脳神経が妊娠後期によく発達するためです。

DHAは妊娠後期以外でも、体に必要な栄養として必要で、特に自分で食事を取れない授乳が終わるまでの間は、お母さんからの栄養に頼ることになります。

だから可能なら、授乳が終わるまでは、お母さんがDHAが不足することがないように気をつけてあげると良いでしょう。

 

妊娠後期になってから、DHAを意識して取り始めるのは遅い?

気づいた時から始めれば大丈夫です。

DHAは妊娠後期に特に必要になるので、妊娠後期から始める意味はあります。

また日本人女性はオメガ3脂肪酸が不足しているわけではないので、そこまで神経質にならなくても大丈夫だと思います。

 

妊娠中にDHAを摂りすぎるとどうなる?

出血傾向などの副作用が懸念されるので、摂りすぎには注意しましょう。

頻度は高くないと思われますが、DHAの副作用としては主に出血傾向(血が止まりにくくなる)、胃腸障害(吐き気、軟便)、血圧低下などがあります。

出血傾向に関しては、1日3gを超えるとリスクが高まる可能性があります(女性の場合は1g以上でも)。

日本人女性は、平均的にはオメガ3脂肪酸は足りているので、追加で摂取する場合は1gを超えない範囲で、少しプラスする程度でも良いのではないでしょうか。

まとめ

  • DHAは脳や神経、視覚機能において重要な成分で、特に妊娠後期で重要。
  • 頭が良くなるなどの一歩進んだ効果に関しては、信頼できるデータが足りないものもあり、期待しすぎないこと。
  • DHAは、必要な栄養として不足しないことを心がける程度が良いと思われる。
  • 平均的な日本人女性では、データ上ではオメガ3脂肪酸は不足していないので、不足している可能性がある場合に、少し補う程度で良いと思われる。
  • まずはサプリより魚食を心がける。ただしメチル水銀の関係から、魚の種類には注意。必要であればサプリの利用も検討。

DHAは体に良い、特に赤ちゃんにとって大事というイメージは間違ってはいません。

しかし頭が良くなるなどの能力向上が期待できるような効果に関しては、データが不十分な効果が一人歩きしている感も否めないため、過剰な期待はしない方が良いと思われます。

日本人女性はそこまでDHAが不足しているわけではないと思われますので、妊婦さんとしては、できる限り赤ちゃんのために何かしてあげたいという気持ちはあると思いますが、DHAに関してはあまり気負いすぎないで良いでしょう。

まずは魚が不足しない食生活を心がけ、それが難しいときにサプリなどの補助を考える程度で良いでしょう。